レポート

「東京とは違う、地域だからできるスタートアップの可能性」 O-GROWTH TALK “Startup GROWTH”~書き起こしレポート vol.1~

※この記事は「地域で事業成長する為に必要な社会性と経済性の両立とは」-O-GROWTH TALK ”Social GROWTH”- ~書き起こしレポート~ vol.1です

実際の動画はこちら

木原真理子(以下木原真):皆さんこんにちは。 多様な事業成長を支援いたします大分県アクセラレーションプログラムOita GROWTH VenturesのO-GROWTH TALKオンラインライブをご視聴いただきましてありがとうございます。


今日はStartup GROWTH(Exit(IPOやM&A)やグローバル展開を目指す成長)ということをテーマに、GOODGOOD株式会社 創業CEOの野々宮さんお迎えして、「東京とは違う地域だからできるスタートアップの可能性」というテーマでお話を進めていきたいと思います。 今回は起業家対談ということで、Oita GROWTH Venturesを運営しておりますKIHARA Commons株式会社 代表取締役の木原が一緒に対談させていただきます。

木原寿彦(以下「木原」):皆さんこんにちは。KIHARA Commonsの木原と申します。
私は以前、エアロシールドという空気環境対策の紫外線照射装置メーカーのベンチャー企業を経営しておりまして、2021年に富士通ゼネラルと資本業務提携し、今はKIHARA Commons株式会社として ベンチャー企業や中小企業のアドバイスやメンタリング出資をはじめ、支援側の仕事を多くするようになっております。 昨年度からこのOita GROWTH Venturesも運営しておりまして、支援側の仕事の他に新しく社内で新規事業も準備している段階でございます。

今回、野々宮さんもとても近い価値観をお持ちで、地域の可能性というのも一緒に探っていけるかなと思い対談できることを楽しみにしています。今日はよろしくお願いします。

木原真:ありがとうございます。それでは、GOODGOOD株式会社 野々宮さんから自己紹介と、今取り組んでいらっしゃる事業について少しご説明いただければと思います。

野々宮秀樹氏(以下、野々宮氏):はい、よろしくお願いします。GOODGOOD株式会社の野々宮と申します。僕たちの事業は、循環型畜産ベンチャー・食肉畜産ベンチャーというのをやっていて、社内ではグリーンミート、グリーンプロテインと呼んでいるんですけれども、どちらかというとエシカルなタンパク質を扱うベンチャーになります。 扱うと言いましても、そのタンパク質の生産から加工、流通、販売を全て、規模は小さいんですけども、自社内で行っている会社になります。

先んじて私の自己紹介をさせてください。私自身は大学2年生の時、19歳の時に金融領域で起業しています。その当時、金融ビッグバンが日本の最中でして、金融制度の自由化がどんどん行われていました。そういう中で、当時まだあまり日本では一般的ではなかった、経営権と配当受益権を分離して、その配当受益権だけを最終的には証券化して自動化するという仕組みを、おそらく日本で早いタイミングで考案して作り上げたというのが僕のキャラクターです。その後そういったノウハウを活かして金融機関さんなんかと組みながら不動産領域にも進出しました。

不動産領域の流動化、今となればもうジェイリートという名前が付いてますけど、その当時はアメリカにしかリートがなかったんですよね。そういったものを、証券会社さん・普通銀行さん・信託銀行さんなんかと一緒に組みながらどんどん新しいリートを組成していって、それを証券化するということをやっていました。

30代は、元SONY会長の井出さんが創業されていたクオンタムリープという会社に、井出さんと一緒に共同社長という形で経営参画をしていて、今から7~8年ぐらい前に、循環型の資本を扱いたいなということでGOODGOODを起業しています。 会社の内容としては、 冒頭お話した通り、僕たちは食肉・畜産ベンチャーって形でスタートアップを経営しています。

昨今は、お肉が「けしからん」ということで、世界各地、特に欧米の白人の文化の中で「お肉を食べるのってどうなんだ。」みたいな、色々な価値観が生まれてきている状況にあろうかと思います。その、お肉の「けしからん」と言われているものが何なんだろうってことで因数分解してみると、大きくこの3つの問題に集約されているようです。

1つは環境問題。畜産にまつわる環境への良くないインパクトですね。そういったものがたくさん評価されていて、 畜産を続けていくと地球の環境が崩れてしまうんじゃないかということですね。で、もう1つは食糧問題。こちらは世界人口が爆増してる中で、家畜に人間が食べられる餌を与えてタンパク質になって、それを摂取するっていうのは、すごく食的には食料自給的にはすごく問題があるんじゃないかと評価されるんですね。

そして、もう1つは家畜福祉。動物がかわいそうじゃないかというのが1つですよね。そういった部分がこの3つの大きな原因になっていて、食肉文化そのものに対しての疑問符がついているという風な状況です。僕もこの3つに関しては問題として同意しています。 同意しているんですけども、僕は残念ながらお肉が大好きなんです。だから、お肉を食べ続けられるためにこの問題を解決していきたいということで、GOODGOODを創業しています。

手法としては、自然生態系の力を使いながら、そこに先端テクノロジーを掛け合わせたことによって、食肉産業、先ほどの問題をクリアしていこうという風なアプローチをしています。世界人口がこれだけ増えて、地球のバイオキャパシティが足りてません。

今の日本人のライフスタイルを世界中の人からすると、地球3つ分ぐらい必要だといった点もあるということです。 どの業界もそうですけども、リニア型からサーキュレーションを起こすような産業構造に転換していかないといけない。新規マテリアルの投入ってなるべく少ない方がいいよねってことで、畜産業界もそういった状況に今あります。畜産業界のタンパク質の生産は実に効率が悪いです。

実際にお肉、特に下降り和牛を1キログラム取り出すのに25キログラムの食べ物が必要な状態です。

一方で、私ども九州の方にも拠点を持ってるんですけども、九州では花盛りな霜降り和牛に関しては、国内自給率はすごく高いんですけども、牛生産に関してバイオキャパシティベースでいくと、実は90パーセント以上がアメリカ産の飼料だったりするわけですよね。こういった部分が実は大きな問題なんじゃないかと取り沙汰されています。

だから、僕たちは、その地にあるバイキャパシティでタンパク質を生産しましょうということで、その地に牧草を育て、草食動物が食べ、そのうんちやおしっこの窒素分が太陽エネルギーと雨の水によって光合成をして、また草が育つという循環をするような畜産を目指しているというところです。

僕たちがやっているのはこういったところでの畜産になります。これ、実は後ろは九重連山でして、この北側は大分県になります。僕たちの1つの拠点は、熊本県の産山村というところに自社の牧場を持っています。

これはまさに産山村の写真ですね。南向きの斜面なんですけども、こういったところで和牛を放牧しています。

これは和牛を放牧してる風景なんですけども、写真で見るとすごくなだらかに見えるんですけども、実は急峻でここでなかなか人間の食料生産ができない。田んぼにすると棚田が必要ですし、畑にするとこの斜度で土が流れちゃう状況で、こういったある種人間の食料生産の余白地で僕たちは牧草を栽培して草食動物を育ててタンパク質になってもらうという風なことをしています。

この辺りの写真は僕たちが運営しているレストランとかB to Cの事業ですね。

会社そのものは僕の他に、ITの専門家、食肉の専門家、あとは販売・商品開発の専門家 で、まさに循環型畜産のノウハウを持っている熊本の一族であったり、そういったメンバーと会社運営をしている状況です。皆さん、どうぞよろしくお願いします。

木原真:野々宮さんの今までのご経歴・キャリアがすごくユニークすぎて。19歳で金融の世界で起業されて、今こういう循環型の畜産という一次産業に関わられていると。
このGOODGOODを創業されようと思ったそもそものきっかけというのは、私もお肉が大好きなんですけど、「お肉が好きだ」っていうその気持ちで創業されたんでしょうか。

野々宮氏:そうなんですよね。まず僕は当然金融資本のルールブックを勝手に持ちながら、次の事業のネタを探すわけですよね。その時に、その金融資本という自分がいた土俵の中に、いくつ違和感を感じるようになったのが、今から約10年少し前なんですね。当然、金融資本はすごく便利で洗練されていたので僕も大好きなんですけども、金融の世界では、資本っていうのは価値創造の原子という風に定義されているんですよね

僕は、製造業の商いをしている実家に生まれていますので、その価値創造の原子が金融だけに集約されていることに対してもすごく違和感がありながら金融業界にいたんです。事業の成立する要因っていうのは、当然お金は1丁目1番地で当然大事なんですけども、実はそれ以外にも当然、スキルであったりとか、信頼であったりとか、見地であったりとか、ネットワークであったりと、そういったものも十分事業の価値創造の原子になっているなっていうのもすごく感じながら金融の世界にいたんです。その時に、前職のコンタムリープで井出さんの存在が結構大きくてですね、僕は世界中で活躍する井出さんのかっこいい姿を見させてもらっていたわけですよね。

彼が日本人でありながら、ゴリゴリの白人の世界の中に入っていって、かっこいいと言われているその世界観で、それによって同じ土俵に上がって色んなビジネスの交渉ができている状況を見ると、何もお金だけが力を持っているわけじゃなくて、そういった文化的なものが実は事業の価値創造にすごく重要なんじゃないかなと思って、ある種の文化資本みたいなものに興味を持ったんですよね。僕の中では、文化っていうのはある程度1つのことに対して熱量をかけ続けるベクトルが必要だと思っています。熱量とその一定の熱量をかけ続ける期間が必要で、そこまでしないとおそらく文化まで消化しない。自分の中で興味のあるもの、死ぬまで興味がついてないだろうなっていうものを棚卸してみたら、ダントツに残ったのがお肉だったんですよね。(創業の理由は)そういう風なこと、お肉が大好きでということです。

木原真:野々宮さんが提唱されているような「金融資本主義の世界に文化資本主義のエッセンスを」というお言葉だったりとか、本質的な自然資本、いわゆるこの自然環境、まさに土とか太陽とか植物とか、 こういった自然資本や文化資本の価値を磨き続けたいっていろんなインタビューで言われてるんだと思うんですが、これを実践していくためのGOODGOODさんの事業なのかなという風に思います。

金融資本の資本主義だけではなくて、文化資本のエッセンスを入れていくみたいなことは木原さんもどうでしょう。これは地方ならではスタートアップの何かヒントになるのかなと思うのですが。

木原:そうですね。1番興味があることで言うと、僕はどっちかというと、自分のその価値観に沿った社会課題があったら、それをやりたいみたいな感じでそれ以上のことはあんまり考えずに走っちゃう方で、事業の種を見つけるという考えはあんまりないんですけど、これから起業をしたい方が事業の種をどう探せばいいのかみたいな課題が片一方にある時に、野々宮さんがおっしゃった興味の棚推しっていうことと文化にするということは、僕もほんとに同意なんですけど、文化にするまでって労力もかかるし、時間もかかるし、やっぱり自分たちの覚悟がいると思うんですよね。

そこってどういう風に最初やったのかはもしかしたら皆さんが興味持つとこなんじゃないかなと思うので、そこをお伺いできたらなと思いました。

野々宮氏:なるほど。僕の場合は先ほど申し上げたように、とにかくお肉は好きで、実は金融で19歳の時に起業して、多分通常の周りの大学生とかよりも 少し小金を持っていたんですよね。

その小金を使って、世界中のステーキハウスとか牧場とかミートパッカーとか精肉店を回る旅をしたんですね。 元々ライフワークでお肉がもう大好きで、お肉の源流を遡る旅みたいなことをずっとしていたんです。そういう意味でいくと、やっぱり好きなことが1番他の人よりも熱量を注ぎ続けやすいみたいなところがあるので、僕の場合はお肉が金融と同じぐらい好きな世界だったので、あまり迷いなくお肉の事業をやりたいという風になったんですね。ただ、一方でそのお肉の世界を知れば知るほど、いろんな問題を知るわけですよ。消費者としては全く気づかなかったようなことにたくさん気づくようになりまして、この問題を解決すると、もしかすると地球上の食肉文化、もっというと食文化みたいなものを、新しい時代に導けるんじゃないかみたいな、すごく大それたことを考えるようになって、これは多分僕にしかできないだろうと思うようになりました。その問題が、ファイナンスと生産。いわゆる、農政と金融のセクションで、結構横断的に解決しないといけないことがたくさんあってですね。このバイリンガルの人間っていうのは、僕が見た限り、金融の世界でも農業の世界・畜産の世界ではあまりいなかったんですよ。なので、これも僕がやるしかないなという圧倒的勘違い力で今ここにいます。

木原:重要ですよね。むしろでもお手本のような進め方な気がします。ありがとうございます。

木原真:スタートアップとか起業の時って、どういう事業テーマに取り組むか、どういうテーマに自分の人生を注ぐというのが一番起業家の悩むポイントだったり、実際事業を始めても、このテーマでいいんだろうかって悩むところだと思うんですけど、野々宮さんみたいに好きなことや圧倒的な熱量を注げることをやっていこうと思うと課題や問題が見つかって、その中で自分が活かせることから自分にしかできないっていうところに到達する人もいれば、木原さんみたいに、どちらかというと課題とか問題意識が先にあって、それを誰かのために解決したいみたいなところで熱量が高まって、熱量を持って結果的に自分にしかできないことになっていくような。どちらのアプローチでもいいのかなっていうのは、お話を聞いていてすごく思いました。
GOODGOODさんは、世の中的にはソーシャルグッドな会社として取り上げられることが非常に多いと思うんですけれども、 今の時点で野々宮さんが思う事業成長とはどういう成長なのか、どんなことを考えていらっしゃいますか。

野々宮氏:そうですね、どちらかというとフロー重視じゃなくてストック重視のビジネスモデルなんです。なので、ストックの総量が増えることが僕らにとってはやっぱり成長であると。これはもう当然、放牧用農地みたいなハード面でもありますし、当然一方で、ソフトな部分で、循環型農業のノウハウであったりとかブランド力も当然そうなんですけども、僕たちはどちらかっていうとストックを重視して事業価値をはかっているというようなところですかね。

木原真:このフローとかストックというお話ですが、例えば「ストック」は、さっきおっしゃったみたいに、ノウハウとか農地であるとか、溜まっていくもの・広がっていくものっていうイメージなのかなと思うんですけど、 逆にそんなに重視されていない「フロー」というのはどういうイメージになるんでしょうか。

野々宮氏:そうですね、例えば畜産の業界でいくと、お肉をいろんな牧場から仕入れをして加工して付加価値を高めてそれを消費者にお売りするみたいなことがフロー型のビジネスかなと思うんです。で、そこには自社の放牧用農地みたいなことは必要なくて、無尽蔵に取扱高を増やしていきやすいようなイメージですよね。 一方で、ストック型っていうのはそうではなくて、畜産の英語表現も「ライブストック」って言われるような、そもそもストックの概念なんですよね。 生き物をストックしておくんだというのがそもそもの畜産の英語の語源だったりするので、そういったところに関しては、僕たちがやっているようなことというのはストック型ビジネスです。

木原真:あんまり身軽にしないで、自分たちで覚悟を持つみたいなイメージなんでしょうか。ストックというのは。

野々宮氏:そうですね。本来はそうでしょうね、きっと。

木原真:なるほど。身軽にビジネスしようと思ったらお肉の分野でもできる方法はいくらでもあると思うんですが、そうじゃなくて、やっぱりあえて持たなければいけないこと、持つことによって文化的な資本が生まれてくるものとか、自分たちの世界を実現できるものがあるっていうイメージなんですかね。

野々宮氏:そうですね。

木原真:一方で、スタートアップとしては、将来例えばExitやIPOであるとかM&Aであるとか、そういった成長というのは野々宮さんは目指していらっしゃるんでしょうか。

野々宮氏:今から3年後にNASDAQにIPOをして大きくキャピタルゲインを得て、 僕はセミリタイヤの生活をするというようなこととは、真逆のイメージをしています。

木原真:一瞬、そうちょっと信じかけた人もいたかもしれないですよね(笑)
野々宮氏:当然そういった価値観を否定する話ではないんですけども、金融業界のバランス的にはそういった考え方の人の方が多いんですよね。僕としてはカウンターバランサーを目指しているので、 あえてそうではない方を評価しています。ただ一方で、僕たちの会社は株式会社なので、株式の株主の利益の最大化っていうのは当然市場命題です。結局的にはその社会利益よりも株主利益を優先しないといけないんですけども、 僕は社会利益を優先することによって、最終的に長い目で株主利益に繋がりますよってことを株主さんにご説明しているようなところですかね。そういう意味でいくと最終的には実はIPOストーリーも持ってますし、バイアウトも全然オッケーですし、僕たちの資本よりもこの社会利益の追求が叶うんであれば、当然僕たちがその資本を持っておく必要はないかなという風にも考えています。

木原:株主さんたちに対してどういう風なビジョンで、投資する側からしたらどういうモチベーションで投資していただいているのかなっていうのは興味があります。僕はそういう投資の仕方とか、そういう投資先が増えればいいなと思っていて。その辺を参考にお聞かせいただきたいなと思います。

野々宮氏:僕は金融出身なので、お金には「色」があると思ってるんですよね。なので、投資家さんっていうことで分けているのではなくて「お金の色」で判断しています。特に僕たちの株主さんは、多様な投資ポートフォリオを持ってるんですね。そこの中で1番時間がかかっても許容できて、かつ、あまり過度なリターンを期待しないような。とは言いながらも、寄付ではなく明確な投資資金、1番端っこのお金を投じてくださいという風にお願いしています。逆に、早くて利回り希望されるみたいな話になってくると、僕のかつての友達が得意分野なので、友達を紹介しますよというような話をさせてもらっています。

木原:僕も本当にそういう価値観が広まればいいなと思うんですけど、とはいえまだまだ大きい資産額があればポートフォリオの中でっていうのはあるかもしれないですけど、だんだん僕はそこを中心として事業投資っていうのが広まっていく世界になれば善いなっていう理想を持ってたりするんですけど、そのあたりはどうですかね。

野々宮氏:僕も極めて同意できますよ。 ちょっと例を2つあげたいんですけど、1つは、例えばボルビック社みたいビジネスモデルですよね。自分たちで水源地をストックとして資産として確保していて、そこからお水を採水すると。それをボトリングして販売しているナチュラルミネラルウォーターメーカーなんですけども、彼らは取水制限を自らにかけているわけですよ。要は、利益上限、利益キャップをかけちゃってるんですよね。本来株式会社からするとあるまじき行動ですよね。自ら利益キャップを設定する。そんな会社に誰が投資すんだっていう話なんですけども、彼らはあえてそれをして自分たちの水源域を破壊しないような再水量に努めていると。 その採水した水にこういったその循環型の水を使っていますよ、採水していますよってことをアピールしたり、もしくは、かつて「1ℓfor10ℓ」みたいな有名なプロモーションありましたけども、 そういった食糧問題、水問題に立ち向かうんだと、協力するんだってことで自分たちの水の価値を上げていくわけですよね。それで売れたものを再度、水源域の環境保護に投資をするというような、これこそが事業だというような感覚をお持ちの投資家さんにお願いをするという風なとこですかね。

もう1つの時間軸の例でいくと例えば林業なんですけども、今の林業家さんが伐っている木っていうのはおそらく自分が植えた木ではないわけで、伐った後に植える木っていうのもおそらく自分が伐る木ではないわけですよね。 基準利益だけを追求すると、先代が植えた木を売り、次の世代に木を植えずに終わる1番利益は上がるわけです。株価も当然上がると思います。だけども、林業会社・林業家は絶対そういうことしないです。必ず次の世代のために木を植える。その行動こそが企業価値なんだという風なことを理解してくれるようなリスクマネーとお付き合いしたいという風なことはもう明確に言っていますね。

木原:投資家サイドもそうですし、起業家自身がそういう価値観を持って起業してほしいなと思うんですけど、 どうやったらそういう人が増えるんですかね。

野々宮氏:そうですよね。僕の場合はもう 一旦ぐるぐる回してみました。回してみて、その先にあったものや、なかったものみたいなことがなんとなく自分の中で腹落ちしたんですよね。 製造業のせがれだってことも元々DNAの中にあったのかもしれませんし、そういったことを含めて自分は今ここに行き着いたっていうような流れですかね。

木原:ありがとうございます。あと当然とはいえ事業成長はさせるわけで、ソーシャルグッドなことやっているからこそみたいなところを伺いましたけど、目指す文化にしていくには、多分競合とか真似する人が増えた方がさらに文化になっていくと思うのですが、往々にして、競合に対して大体ビビるじゃないですか。競合の調査をして、競合のことよく把握してみたいな。よくありがちな話ですけど、僕もやっぱり文化を作るには競合が増えないといけないと思っていて。先んじてやっている方はやっぱり競合ができた方がいいなと思うんですけど、どうしたらそういう風に思えるんでしょうね。すいません、こういう精神的な話ばっかりで、とても重要なことだと思っていて。

野々宮氏:うんうん。やっぱり商売と産業のスケールの違いっていう部分かな。それに尽きるんですよね。産業を作んないとそもそも土俵に上がれないみたいな。土俵を作んないと土俵に上がれない。そうであれば、土俵を作ろうみたいな順序では僕は考えていて。今から10年前っていうタイミングで行くと、おそらく牧草牛とかグラスセットビーフみたいなことって一般的ではなく。まだヴィーガンっていう価値観も日本ではそれほど浸透してなかったんですよね。そういう中で、僕は和牛をグリーン化することに対してすごく大きなビジネスチャンスを感じていたんですが、これはいわゆる土俵にもなっていない状況だったので、まずは土俵を作んないと。極端な話、和牛を扱っている以上は1番今後大きなマーケットって海外マーケットですよね。その海外マーケットに対して何かしら表現したい時に、僕1人の力じゃ声が小さすぎてどうにもなんない。であれば同じようなこといいよねって言ってくれるような、競合でありながら仲間を増やしていきたいっていうのは当初から強烈に考えていました。

木原:そうやって事業というか文化を作って、本当に社会がいい方向になっていくっていうことを、 経営者自体が「それがベストである」って思えるようになれば、僕も善いなって いつも思っています。ありがとうございます。

野々宮氏:特にスタートアップで、いわゆる成長とか成功の指標としては当然その財務的なスケールってありますよね。いくら稼いでんだとか、いくら売り上げてんだっていうのは当然大きな指標になってきます。 もう一方で、そういった株主利益や個人利益ではなくて社会利益みたいなところも当然大きな手法になっていると思います。この2つを掛け合わせて、最近ゼブラ企業みたいな形の概念は当然アメリカ発ではあるんですけども、僕らは実はその最上段に大事な価値観を掲げています。これは自己実現なんです。この事業を通じて、事業のステークホルダーが、経営者・株主・従業員、もっと言うと近隣の方々も含めて、何かしらの自己実現を伴うことができるのか。自分たちで1人ではできなかったけどもGOODGOODの事業に関わることによってそこの部分の自己実現ができるかもしれないねっていう風になると皆さんすごく応援してくれやすいので、そういう仕組みはあえて作っています。

木原:ありがとうございます。

––––––– vol.1 終わり

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