レポート

Oita GROWTH Ventures(おおいたグロースベンチャーズ)採択起業家インタビューvol.2 毛利 謙太氏(株式会社 Buzcycle)

<令和5年度 Oita GROWTH Ventures 採択者> 株式会社Buzcycle 代表取締役 毛利 謙太氏

こちらは、⼤分県成⻑志向起業家育成⽀援事業「Oita GROWTH Ventures(おおいたグロースベンチャーズ)」の採択起業家5者の事業を始めたきっかけやお人柄、今後の展望をより多くの方に知っていただくことと、実際にアクセラレーションプログラムを開始しての現状や、今後本プログラムに期待をされている事業成長(3つのグロース)についてお話をうかがったインタビュー記事です。

採択者のお二人目は、「昆虫の可能性で”未来永劫持続可能な循環型社会”を実現し人類に貢献したい」と語る、株式会社Buzcycleの毛利謙太さんをご紹介します。

株式会社Buzcycle 代表取締役 毛利 謙太氏

大分県中津市出身。大分県立東高等学校電気電子科を卒業後、元々興味があった英語を学ぶため関西外国語大学英米語学科に入学。大学卒業後は大阪府内の飲食店で働いていたが家庭の事情で帰郷する。家の手伝いをする傍らで、高校生時代にアルバイトをしていた会社でゴミ収集の運搬業務に就いた。

「ゴミ収集の仕事をしていると毎日膨大な廃棄の食品を回収するんですが、今後タンパク源が足りなくなる未来が来ると心配される中、膨大な食品が廃棄されていることや、廃棄された食品がそのまま焼却処理されることに矛盾を感じていたんです。」と話す。

この問題を解決できないかと考えている時に、廃棄された食品に集まりそれを食べている昆虫に目がとまった。

”ゴミを昆虫に処理させたら面白いんじゃないか?”

その発想から、昆虫テック分野について海外の論文等から独学で学び始め、実際に自宅でミールワームの飼育を始めた。
昆虫の中でもミールワームを選んだ理由は、タンパク質の素材でもあり廃棄された食品等のゴミを食べるという点にある。2020年には株式会社Buzcycleを設立し、ミールワームの研究と事業開発を進めてきた。
世界人口の増加に伴う将来的な食糧不足(タンパク質の不足危機)の課題の解決や、環境負荷の少ない持続可能な食糧生産体制や廃棄物処理を確立できる”未来永劫持続可能な循環型社会”を実現させるための糸口として昆虫が持つ可能性に魅力を感じ、昆虫タンパクを活用したビジネスを展開している。

【実績】

■2020 年 第 18 回大分県ビジネスグランプリチャレンジ枠 チャレンジ賞受賞
■2022 年 第 20 回大分県ビジネスグランプリグランプリ枠 奨励賞受賞
■2023 年 第 1 回だいぎんニュービジネスプランター グランプリ枠 最優秀賞受賞

会社紹介・事業紹介

ミールワームの力を利用して、食糧廃棄物を高品質のタンパク質、肥料や飼料などに変換し、それらを様々な用途で活用し無駄のない循環型社会の構築を目指す。

ミールワームの生産・加工及び販売を行い、現在は主に、ペットの飼い主やペットフード販売業者に対して、ペット用飼料としての生きたミールワームや乾燥させたミールワームの加工及び販売を行っている。近々、農作物の生産者や肥料販売業者向けにミールワームの糞を原料とした肥料の製造と販売を行う予定。

ミールワームの飼料には、地場企業などの協力を得て、酒造から出た焼酎の残りかすやきのこ農家から仕入れた廃菌床などを用い、安定的な供給とトレースの問題に対応しており、今後の飼料原料の高騰の回避や国内完結型の生産を目指し、取引先の安定した経営に繋がるよう尽力している。
特にミールワームが、毛利氏の地元である大分県の水産養殖業を支える材料となり得るのでは?という想いから、共同開発を行える研究機関や実証実験を行える漁業関係者との繋がりを強化する為、各関係機関との意見交換などを行っている。

また、2023年の8月からは食用の原料としてのミールワームの出荷も始めるなど、昆虫の持つ可能性をどう活用・定着していけるか研究を続けている。

どんな事業成長を目指していますか(3つのGROWTH)

昆虫の可能性で人類に貢献したい
-Startup GROWTH・Social GROWTH・Innovation GROWTH-

「そもそも自然界では動物の死骸や糞などを昆虫が処理しています。それは自然の仕組みだけれど、人間がその仕組みを使っていないだけだと思っているんです。その仕組みを人間が技術として取り入れられたら、それは1つの地球のあるべき姿ではないかと思ったんです。」

ミールワームは、人間が廃棄した食糧などを餌として生産することができるため、廃棄物燃焼処理の際に発生するダイオキシンや CO2 などの化学物質も大幅に削減することができる。また、世界人口の増加によって今後起きうる深刻な食糧不足の問題に対しても、畜産・水産養殖業の飼料としてミールワームをはじめ、昆虫を活用することで、肉や魚などの動物性タンパク供給に貢献できる可能性を秘めている。

「国内では昆虫テック分野の中核となるプレイヤーもまだ少ない。昆虫を活用した持続可能な生産モデルを定着させ、次世代の子供たちの未来を守っていきたい。」と話す。

Oita GROWTH Venturesに期待していること

プログラムが始まって数回メンタリングを行っていますが、状況はいかがでしょうか?

「このプログラムにエントリーしたきっかけもそうですが、今4期目で感じるのは、結局1人でできることはほとんどないということです。これだけ多くの方にアドバイスをもらえる機会もそうそうないですし、そこを一番求めていたので、これからもご指導いただきたいと思っています。
実は最近プレゼンをしてもワクワクしない自分がいたんです。元々はワクワクから始まった事業のはずだったのに、事業として成長していない、ずっと同じ場所にいるという感覚があり焦りを感じていました。でも、メンタリングを受ける中で自分の凝り固まっていた考えをほぐす機会を得ることができ、事業を整理することができたんです。
今は、”昆虫の可能性で人類に貢献したい”という原点に立ち戻れたと思えたので、現在はその第1フェーズと捉え、今後はさらに、人類が直面している環境問題や食糧問題に対して昆虫を使うことで、自分が本当に目指す世界を現実化したいと思います。」

<令和5年度 Oita GROWTH Ventures 採択者>

株式会社Buzcycle 代表取締役 毛利 謙太氏
事業内容:昆虫の可能性で未来永劫持続可能な循環型社会を実現する

会社HPはこちらから

■取材・文:大塚あかり

■多様な事業成長を支援し、新しい経済と社会価値を創る「Oita GROWTH Ventures」

公式サイト:https://oita-growth-ventures.com/
主催:大分県・公益財団法人大分県産業創造機構(おおいたスタートアップセンター)
運営:KIHARA Commons 株式会社

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