レポート

資金調達にもEXITにも影響する!?スタートアップにおける知的財産の具体的な活用方法とは? ~「イノベーションを考える起業家が知っておくべき攻めと守りの知財戦略」書き起こしレポート vol.2~

※この記事は「イノベーションを考える起業家が知っておくべき攻めと守りの知財戦略」-O-GROWTH TALK”Innovation GROWTH”- ~書き起こしレポート~ vol.2です。

vol.1はこちら

vol.3はこちら

テーマ2:スタートアップにおける知的財産の役割、重要性、活用

次にですね、知的財産を取ったらどう活用するのかっていうお話なんですけれども、これ特許庁が出してる国内外ベンチャー企業の知財産戦略事例集といって、ここに書いてある10社は全て国内のスタートアップですね。IT系、電気系、物作り系、化学系、バイオ系等の様々な分野のスタートアップさんがいます。特許庁が10社集めてこの10社にどうやって知財産活用していますかっていう、ヒアリング結果なんですね。

それをちょっとまとめてみると、アライアンス・参入障壁・ライセンス・ファイナンス・マーケティングっていう4つの使い方をしてますよとなっています。

このアライアンスに使っているところが8社で、参入障壁として使ってるのが5社、ライセンスで使ってるのが6社、ファイナンスに使ってるのが9社、マーケティングが1社っていう感じなんですね。なんとなく知的財産って言うとやっぱり参入障壁とかライセンスっていう、こっちのイメージが強いと思うんですね。

最近、「それってパクリじゃないですか?」っていう知的財産が真似されたというドラマが放映されていたと思います。この「真似されるのを抑えるにはどうしたらいいんですか」ってのが参入障壁的な考え方で、自社のプロダクトと同じようなものを、サービスと同じようなものを誰かに真似されましたって場合に特許があればですね、「それをやめなさい」っていうことを言えます。もし、やめなさいって言ってやめなかったら、裁判で訴えられて裁判所に無理やりやめさせてもらえちゃう。また、やめるだけでは済まなくて、真似して使った技術によって得た売り上げから一部を損害賠償金として、特権者に払わないといけないということになっていて、これがまた結構な金額払わないといけなかったりするんですね。

わかりやすいところで言うと、任天堂側がコロプラの白猫っていうゲームを訴えて、そのゲームの裁判は最後和解で終わったんですけれども、コロプラは30億円程度に払ったっていうことになってですね。30億円ってすごい金額ですよね。特許法で定められてるその損害賠償金の金額ってどうやって計算するのかというと、色々あるんですが、1番高い金額の計算の仕方っていうのは、コロプラは、任天堂の特許を使って得た利益を全部任天堂に吐き出しなさいということになって、コロプラとかって例えば100億円売り上げを上げて、モバイルゲームって利益率が高いですから、30パーセントの利益率だったりすると、売り上げ×利益率30パーセントの30億円、それ全部持っていかれちゃいますよということになります。

こういう参入障壁の使い方が1番オーソドックスですね。あとは、まあライセンスも似てますよね。うちの特許ライセンス料を払うんだったら使っていいですよ、嫌だったらやめなさいよっていうのがライセンスです。参入障壁とセットで使われるようなところなんですけれども、もちろんスタートアップにおいてもやっぱりこういった使い方っていうのは当然されることはありますし、実際スタートアップ界隈でも特許の紛争ってのは起きています。

一方でこういう真似されるっていうのは大事件なので、大事件的な使い方しかできないんですかっていうとそうじゃなくて、日常的に使えますよっていうのがこのアライアンスとかファイナンスっていう使い方だと思うんですね。アライアンスは、スタートアップさんが大企業とじゃあ協業しようという話を持っていくとですね、大企業の場合、「スタートアップの技術って他社の特許を侵害してないの?と。これを侵害してたら、ちょっと一緒にできないんだけど。」みたいなことを言われるんですけれども、「ちゃんと特許取ってますから大丈夫ですよ」っていうことをスタートアップ側で説明ができると、スムーズに協業が進みます。特許というのは世界で1番新しいから特許してもらえてるわけで、他は特許を取れないはずなんですよね。大企業側も論理的にそうなることはわかっているので、特許を取得しているところは、協業が進んでいくということを、いろんなスタートアップさんが言っています。他にもファイナンス、資金調達の場面においても、投資家からすると、「本当にすぐ真似されないの?」とか「事業計画って、高い利益率が前提の説明になっているけど本当なの?」みたいなところで、「いや、特許があり、参入障壁ありますから大丈夫ですよ」という説明をすると、資金調達がうまくいきやすい、M&Aもうまくいきやすい、というようなことをスタートアップさんが言われています。

または、マーケティングとかブランディング、これもやっぱあるかなとは思っていますが1社しかかかれていません。他の会社は書かれていてないですけど、書いていない会社でも実際はそういう使い方してるところはたくさんあると思います。

やっぱり、いろんな武器を使いたいわけですけれども、シード期とかはお客さんも少なくて武器がスタートアップさんにはない中で、いや、知的財産があると、技術が武器になるということになり得ます。しかも、知的財産という特許っていうのは、 特許庁でちゃんと審査をして、国が世界で1番新しいおすすめにお墨付きをくれてるっていうことなので、すごく説得力があるんですよね。なのでこの会社は技術力あるなという風に見てもらいやすいので、テックベンチャーとして、こう認めて欲しい技術は、特許を取って、ちゃんとプレスリースをして、サービスの説明資料にも入れたりしてやっていくことで、ブランディングっていうのはできるんじゃないかと思います。

木原:そこは、なんか、1番やりやすいとこだから、むしろ絶対やっといた方がいいですよね。

杉尾氏:そうですね。本当に特許を出願して、新しければもらえるっていうので、お金もある程度見える範囲でしっかりできるので、やらないと1つ武器を減らすみたいな感じになるので、もったいないなって思います。

知的財産を取得すると、協業の参入障壁、アライアンスの材料、マーケティング、色々使えます。これはバリエーションを上げる1つの要素になります。他にも色々とバリエーションあげる要素っていうのは、色々あると思うんですけれども、知的財産が1つの要素になります、また、経営資源になりますっていうことですね。

ひとつ誤解をしがちなのは、特許権を取ると企業価値が何円上がるとか、この特許には1億円の価値があるとか、そういう感じでもなくて、そういうシンプルなものにはなり難いです。特許を最後売却するってなったら、金額を算出しないといけない場面もあるんですけれども、鉛筆なめて計算してる世界っていう面も強いと思います。それよりも、一般的な使い方っていうのは、エクイティ・ストーリーに特許を入れていただくっていうような使い方かなと思います。例えば、この機能は特許で押さえているので、当社しか実装できないと、ユーザーが獲得できるし、他社が参入してきても同じようなサービスはできないので、今の高いサービス価格が維持できるとかですね。あとは、非常に基本的な特許なので、他社が同じ市場に参入できない、参入できるとしても、何年遅れるとかですね。だから、こういった特許を実際の事業計画とかエクイティ・ストーリーに入れていただくと説得力が出てくるというところで、1つの材料になるのかなと思います。

木原:ここはもうほとんど資金調達につながる話ですよね。

杉尾氏:そうですね。次に行きたいと思います。先ほどの話を、図で整理してみます。自社製品と競合製品があった場合にどうやって差別化していくのかっていうと、自社製品にはこういう機能があり、非常に魅力的なんですよってことを、アピールしていくと思います。ここで、競合製品は、例えば、機能Aしか備えてないみたいな場合に、自社製品が機能B、C、D、Eを備えていると、堅実なユーザーはやっぱり自社製品を選ぶと思うんですね。私たちが電気屋さんに行って、掃除機買おうっていう時も、こうやって比較して買うと思います。自社だけがサービス提供している状態だと、別にこういう比較はされないんですけれども、後からやっぱり後発が出てくるとかってなると、絶対こういう比較になってくるんですね。その時に後発は先発のサービスがあればそれを真似ればいいっていう話で、むしろ開発コストとかもかからないわけで、安くサービス提供ができる可能性はあるんですけれども、この機能B、C、D、Eみたいなものに、ちゃんと1個1個、こう特許を取っておくということをすると、機能Aは残念ながら特許が取れませんでしたってなったとしても、結局、競合製品ってのいうは機能Aしか実装できないので、やっぱり先発メーカーの優位性ってのが出てくるはずなんですね。逆に、こういうことをしないと、先発である優位性っていうのが、もう市場に認知されましたとか、ユーザー数を獲得しましたっていうことにしかなりません。もちろんそのような要素で逃げ切れる場合もあると思うんですけれども、ベンチャーキャピタルの方のコメントですごく説得的なコメントを仰られるなと思ったコメントがありますので紹介させていただきます。そのベンチャーキャピタルの方曰く、「BtoCのWebサービスとかだと、ユーザー獲得を短期間でやっちゃったら、もうそれで勝負決まるという話があるけれども、BtoBはWebサービスでも作り込むので特許が効いてくる」ということです。補足しますと、例えばメルカリって、上場するまでに特許取得してたのが1件とか2件なんですね。上場してから今すごい特許を取り出してるっていうような感じなんですけれども、メルカリって多分上場するまでに結構時間かかってるんですけれども、ユーザー獲得したらもうそれで勝ったということではないかと思います。paypayもなんかも今スマホの決済だと結構強いと思うんですけれども、あれも広告を打ってユーザー数を囲ってしまってるので、あんまり特許っていう感じではないと思います。BtoCは、amazonの例はあるものの、やっぱりそういう面があると思います。一方、BtoBっていうのは、開発に時間かけてプロダクトが作り込まれていくので、特許を取れる機能の開発が増えていき、その機能でプロダクトの性能が変わっていくと思います。なので、1個1個特許を抑えるのって重要だよね、っていうことをベンチャーキャピタルの方もおっしゃっていて、すごくよい視点だなという風に思って、私も使わせてもらっています。BtoBだったり、BtoCでもamazonの例はありますから、使える説明だと思います。

テーマ3:知財戦略を開始するタイミング、タイムライン、費用

次に、この知財戦略を開始するタイミングやタイムライン、費用を見ていきたいと思うんですけれども。先ほどの話でも、早く出さないといけませんよって言いましたが、例えば、Google、Amazon、facebook、Uber っていうですね、GAFAのapple抜けの代わりにUberを入れているんですけれども、こういった企業がどういうタイミングで出願してるかっていうとですね、Googleは9月に会社設定したら、翌年の3月、出願しているとかこの1990年代にはこういう感じですよね。

Amazonはもう設立前に出願しています、facebookも設立したら翌年~1年ぐらい、1年以上ちょっと経ったってますけれども出願しています。Uberもその年のうちに出願しているイメージなので、やっぱり米国はスタートアップの知財意識が高いと言われていますし、そういう情報がしっかりしてるし、そこにちゃんと資金をかけることに、投資家にも許容されてる風土があるから、こういう状態になってるわけですね。日本でもこういうタイミングで出願しているスタートアップさんが増えていると思います。特に私はそういうスタートアップさんが、相談に来てくれる場所にいるので、そういう人をよく知っているということだと思うんですけれども、私も知らないようなところもいっぱいあって、相談してこられてないような会社さんっていうのは、やっぱりそういう早いタイミングでできてないことがたくさんあると思います。やっぱり成功するスタートアップさんというのは、皆さん早くやっているっていうのは、こういうところからわかるのかなと思うので、是非早いタイミングでやってほしいということですね。この早いタイミングでやらないといけない理由っていうのはこういうことです。

特許って新しくないと取れませんよっていうのを図で説明します。このグレーのものっていうのは、新しくないっていうことですね。要は、他社がすでに商品を売っちゃいましたとか、他社が特許出願しちゃいました、あるいは自社でもいいんですね、自社が商品売っちゃいましたとかってなると、売ったり、何か特許出願されることによって、もうそれ新しくなくなっちゃうんですよね。それって、時間が遅れていけば遅れていくほど、特に自社が、分かりやすいですよね、どんどん新しい製品出して、新しいプレスリリースしてどんどん新しい情報を出していくので、こう技術的にいろんなものが新しくなくなっていくわけですね。で、こうやって新しいものが、どんどんプレスリリースとかによってなくなっていくと、その後出せる特許ってこんな狭いとこしかありませんよって話になります。こういうグレーの部分がない状態で出すとすごい広い特許取れますよいうことになりますので、裏を返すと、後から出すと狭い特許になるので、結局簡単に回避されてしまったりするわけなんですね。

じゃあ、こういう早いタイミングで出願しようと思うと、どういうタイミングで出願すべきなのかというと、例えばプロダクトが完成したタイミングでいいのかっていうと実はそうではなくて、ビジネスモデルが確立できるとか、コア技術が確立できるとか、アイデアベースでもいいわけなんですね。こうやって早いタイミングから出願をしてやっていった方が広い特許が取れるということになります。また出願が遅い場合で、最悪特許が取れないみたいなケースも当然あります。費用感としてはどれぐらいかかるのかっていうのが、ちょっとイメージが湧きにくいかもしれませんが、最初、特許出願する時に、最初必要な費用は40万から60万ぐらいのイメージです。これが払えないっていうことは、少なくともシードファイナンスの調達後であれば、あり得ないと思いますし、それ以前でも払える可能性っていうのは、十分あるんじゃないのかなと思います。その後、段階的に特許庁で審査してもらうとか、審査が進んでいったりとかすると、5万、10万という単位でお金がかかってきて、最後に80万とか、60万から100万が総額っていう風に書いていますけれども、20万ちょっと積み増される可能性あるんですけど、最初にかかる費用ってこんなもんです。意外と最初に1、2件するのがやっぱり重要っていうところは、これぐらいの費用をちょっと確保していただければいいんじゃないかなと思います。私の方でご用意してる話は、こんなところなんですけれども。

––––––– vol.2 終わり

vol.3はこちら

こちら記事もおすすめです