Oita GROWTH Ventures(おおいたグロースベンチャーズ)R7 採択起業家インタビュー vol.3 伊藤 修 氏(株式会社 BAS)
<令和7年度 Oita GROWTH Ventures 採択者>
株式会社 BAS 代表取締役 伊藤 修 氏
こちらは、⼤分県成⻑志向起業家育成⽀援事業「Oita GROWTH Ventures(おおいたグロースベンチャーズ)」の採択起業家5者の事業を始めたきっかけやお人柄、今後の展望をより多くの方に知っていただくことと、実際にアクセラレーションプログラムを開始しての現状や、今後目指していく事業成長についてお話を伺ったインタビュー記事です。
3人目の採択起業家は、株式会社 BAS 代表取締役 伊藤 修 氏 です。
「【特許取得済】美容室10店舗経営者が挑む「誰でも髪を切れる」スマートグラスアプリ──大分発、世界への挑戦」

株式会社 BAS 代表取締役 伊藤 修 氏
(事業内容)
理美容師技術をスマートグラスで。笑顔つながるセルフヘアカット革命
大分県内各地で美容室10店舗を展開する兄弟が、視界に情報を表示するメガネ型デバイス「スマートグラス」用のアプリ開発に挑戦している。目標は、世界中の誰もが身近な人の髪を切れるようにすること。スマートグラス上に理論的なカット手順を表示する機能はすでに特許取得済みで、セルフカットアプリの試作品も完成。事業を着実に前進させている。
指名制廃止で実現した「業務標準化」の経営モデル
会社名はBAS。兄の伊藤清隆さんはオーナー兼美容師として現場に立ち、弟の修さんは代表取締役として経営を担う。二人三脚で事業を拡大し、現在は大分県内で10店舗の美容室を運営している。
そのうち「ライフ」ブランドの7店舗では美容師の指名制を採用せず、個人のスキルに頼らないよう業務を標準化している。来店客にはその時点で対応可能な美容師が担当するため、指名獲得のためのSNS投稿などの時間外活動が不要になった。店頭の掲示物の張り替えなど細かい業務をスタッフ全員でしており、結果として店全体の業務効率が向上。勤務時間内にカットの練習やSNS発信に取り組む余裕が生まれている。
税別価格は、カット2,600円、ヘアカラー根元2,900円、全体3,900円と利用しやすい水準にしている。主な顧客層は子育て世代の女性で、出店場所は片側1車線の道路に面したスーパーの敷地内が基本。買い物ついでに利用できる利便性を重視した。修さんは「近場で安く、十分きれいになれる価値を提供する」と話す。

特許取得済み:スマートグラスで実現する
「カット指示システム」
伊藤兄弟が進めている新規事業が、スマートグラス用アプリの開発だ。美容師の仕事は感覚的に見えるが、実際には理論に基づく作業。髪のつまみ方から切り方までを順序立てて表示することで、未経験者でも安全で自然なカットができるようにする。
スマートグラスで的確なカット指示を表示する機能は、特許を取得済みだ。スマートグラス用アプリの試作品も完成し、実際のスマートグラスでの表示確認も済んでいる。
ビジネスモデル:基本無料、一部有料課金で収益化
アプリの将来的なビジネスモデルは、一般ユーザー向けと美容師向けの二本立てを考えている。
一般ユーザー向けには、基本的なヘアスタイルは無料で提供する。トレンドスタイルや有名美容師考案のスタイルは有料販売する。
美容師には新たな収入源の創出を目指す。ヘアスタイルレシピの出品プラットフォームを構築し、全国の美容師に有料で出店してもらう。一般ユーザーからのダウンロード数に応じて対価を支払う仕組みを検討している。
親子カット教室で判明した「最大の課題」
このアプリを世界に広めたいが、どのように事業を広げていくべきかが分からなかった。助けを求めるため、大分県が主催する起業家支援事業「Oita GROWTH Ventures(おおいたグロースベンチャーズ)」に応募。採択後は2週間に一回のペースで、メンターと共に事業をブラッシュアップしている。
そもそも「誰かの髪を切りたい」というニーズは、一般の人の中にあるのだろうか。
スマートグラスを使わない「親子カット教室」を開催することにした。参加者は小さな子どもの髪を切ってあげたい親や、高齢の親の髪を切ってあげたい子どもなど、7組14人が参加。集まった人たちは身近な人の髪を切る体験に喜びを感じる一方、未経験者にとっては髪の毛を適切に取り出す作業が最も困難であることが判明した。
課題解決へ:専用クリッパー開発で安全に使いやすく
課題解決のため、指示さえあれば切る部分を誰でもつまみ上げることができる「専用クリッパー(仮)」を開発中だ。現在は第2弾の出来上がりを待っている。
アプリと専用クリッパーを組み合わせることで、より安全に利用できる仕組みを目指す。

ロードマップを描き、投資家にプレゼンへ
今後に向けては、具体的で実現可能なロードマップの作成が必要だ。並行して、さらに多くのユーザーの声を収集し、製品づくりの完成度を高める。持続的に開発を進めるため、投資家に向けてプレゼンテーションをして資金調達をするつもりだ。
「ありがとう」を世界へ──兄弟が語る挑戦の理由
新規事業に挑む理由について、美容師である兄の清隆さんは次のように語る。
「髪を切る仕事は面白いし、何より目の前の人から直接『ありがとう』と言ってもらえる。このポジティブな貢献感を、身近な人の髪を切ることで多くの人に味わってほしい」
修さんは「暗闇の中を進んでいるよう」と不安も口にする。それでも兄弟の決意は揺るがない。
「大切な人にありがとうと言われる喜びは、万国共通。1日でも早く世界中の人に使ってもらうため、絶対に作ります」
大分発の挑戦は美容業界の枠を超え、新しい市場を切り開こうとしている。

■多様な事業成長を支援し、新しい経済と社会価値を創る「Oita GROWTH Ventures」
公式サイト:https://oita-growth-ventures.com/
主催:大分県
共同運営:公益財団法人 大分県産業創造機構 おおいたスタートアップセンター
運営:KIHARA Commons 株式会社