Oita GROWTH Ventures(おおいたグロースベンチャーズ)採択起業家インタビューvol.2 鷲野 祐子氏 (株式会社 くものうえ)
株式会社 くものうえ
代表取締役社長 鷲野 祐子氏
こちらは、⼤分県成⻑志向起業家育成⽀援事業「Oita GROWTH Ventures(おおいたグロースベンチャーズ)」の採択起業家5者の事業を始めたきっかけやお人柄、今後の展望をより多くの方に知っていただくことと、実際にアクセラレーションプログラムを開始しての現状や、今後目指していく事業成長についてお話を伺ったインタビュー記事です。
2人目の採択起業家は、株式会社 くものうえ 代表取締役社長 鷲野 祐子氏です。
「睡眠の質が人生の土台を作る私が経験したからこそ伝えたい」

株式会社 くものうえ 代表取締役社長 鷲野 祐子氏
診療放射線技師からサロン経営者へ
「会社とは?」一人悩んだ日々
人生の1/3を占める〝睡眠時間〟。睡眠の重要性は十分理解しているはずなのだが、忙しい時に一番に削られるのが睡眠時間とも言われている。この「睡眠」の大切さを周知したいと起業した「株式会社くものうえ」の鷲野さん。約14年間、放射能技師という仕事に全力を注いできたが、コロナ渦の影響で働く環境が変わり、不眠が続くようになった。「1時間おきに目が覚めるようになったんです。その生活を続けていたら、感情のコントロールが上手くできなくなり、急に涙が出たり、血圧も急激に上がって吐き気や目眩を起こすようになって。自分の人生がこのまま壊れてしまうんじゃないか、と思うくらいでした」。
病院に頼らず自力で回復しようと、緊張をほぐす様々なリラクゼーションサロンを訪ね、施術を受けた。すると睡眠の質が改善され、徐々に体調も戻ってきた。「眠れることがこんなに幸せなんだと、暗闇の中から光が見えた感じでした」。
〝この経験が誰かの役に立つかもしれない〟という直感を信じ、仕事を辞めて半年後、35歳の時にドライヘッドスパのサロンを大分市中心部にオープンし、ヘッドスパ事業に加えスクール事業も立ち上げた。翌年、店舗を移転し、株式会社を設立。個人事業主から会社を立ち上げたが「どうやったら本当の会社になるんだろう…」と悩み続けていた。そんな時、友人からOita GROWTH Venturesの支援事業を教えてもらった。「ターニングポイントになる助け舟がきて、救われた気持ちでした。締め切りギリギリだったんですが無我夢中で提出書類を作り応募しました。後日、採択決定のメールを見た瞬間、私にとってのギフトが舞い降りてきた!と、興奮して手が震えていたのを覚えています」。

メンタリングで可能性が広がり
未来を描かせてくれた
採択後、早速支援プログラムが始動し、約半年間メンタリングを受けてきた。毎回多くの気づきをもらい、自分を見つめ直す時間になったと鷲野さんは話してくれた。「もっと専門的な知識があれば仕事の幅も広がるのに…と話したら、こういうドクターがいますよと知見をいただき、一人なら絶対に諦めていたこともメンターの方と話すことで可能性が広り、未来を描かせてくれました。一人で孤独だった分、私を応援してくれる人がいるんだという喜びを実感しました」。
会社設立以来、日々の仕事に追われ、本当にやりたいことを見失っていたと鷲野さん。「〝もっと自由でいいんだよ〟というメンターの方のアドバイスに、世間一般の枠の中にとらわれ、狭い世界で戦おうとしていた自分がいたことに気づいたんです。枠を取っ払い自由になったら、やりたいことが見えるようになってきました」。まずは、開店当初から目標だった2店舗目を今年の1月にオープンした。その際も、メンターの方の存在が大きな支えとなった。「本来ワクワクしているはずなのに、心の奥は不安だらけでした。メンタリングのたびに悩み不安な気持ちを素直に話すことができ、大きな安心感の中、2店舗をオープンすることができました」。
トロフィーをイメージ
強い土台が人生を輝かせる
自分が本当にやりたいことを探し続けた半年間だった。頭に思いついたことをメモに残し、その想いを整理して描き、描いては消し…を繰り返し、あるイメージにたどり着いた。「頭に浮かんだのがトロフィーの絵でした。人生をトロフィーに例え、土台(生活の基盤)に不可欠な”睡眠”を整えることで、全体が輝いてくる。”トロフィー=人生” を輝かせるためにはしっかりとした土台づくりが必要で、その土台づくりのお手伝いをしたいという想いを表現しました。これからの会社の指針となるイメージが、やっと固まりました」。

企業にも睡眠の大切さをアプローチ
土台作りをサポートしたい
イメージに近づくための第一歩として、テストケースで法人契約で睡眠のセミナーを実施。「今〝睡眠経営〟に注目が集まっています。社員の睡眠の質を改善することで、企業全体の生産性向上などが期待できると考えられています。今後、企業へのアプローチも行っていきたいと思い、睡眠に関するセミナーを実施しました。この実績をもとに、土台の裾野を広げていけたらと思っています」。
経営者として孤独と向き合い、辛い時期もあった鷲野さん。今回の支援事業に参加し、会社の意味を再び見つめ直す大きなきっかけになった。「会社を立ち上げ、2年間悩み続けてきました。株式会社の代表取締役という肩書きはついてるけれど、個人事業主に毛が生えただけじゃないかと、ずっと自問自答してきました。だからこそ、会社にした意味を大事にしていきたい。店舗を拡大し、売上を作ることも必要です。でも『株式会社くものうえ』の私が、責任ある言葉で睡眠の話を皆さんに届けたい、というブレない軸が見えてきた気がします。何より、今立っている場所はココでいいんだという自信が生まれました」。
「いつかメンターという立場で、私のように起業して苦しんでいる人をサポートできる存在になってみたいですね。私が支援してもらって強くなれたように、同じ気持ちの人をサポートできたらいいなと。私自身もずっと成長し続けたいですしね」と、夢が次々と湧き出てくる鷲野さん。
自身を軸に、すべての夢が繋がって輪になり、波紋みたいに広がったらいいな…と、少女のような屈託ない笑顔で話す。
この先1年後、5年後、近い未来、鷲野さんの周りが大きく動いているイメージが湧いてくる。夢を持つのに年齢なんて関係無いし、夢を持つ大人ってかっこいいなと、鷲野さんがそう思わせてくれた。
■取材・文:安達博子
■多様な事業成長を支援し、新しい経済と社会価値を創る「Oita GROWTH Ventures」
公式サイト:https://oita-growth-ventures.com/
主催:大分県
運営:KIHARA Commons 株式会社