Oita GROWTH Ventures(おおいたグロースベンチャーズ)R7 採択起業家インタビュー vol.2 大村 尚未 氏(トゥエルブル)
<令和7年度 Oita GROWTH Ventures 採択者>
トゥエルブル 代表 大村 尚未 氏
こちらは、⼤分県成⻑志向起業家育成⽀援事業「Oita GROWTH Ventures(おおいたグロースベンチャーズ)」の採択起業家5者の事業を始めたきっかけやお人柄、今後の展望をより多くの方に知っていただくことと、実際にアクセラレーションプログラムを開始しての現状や、今後目指していく事業成長についてお話を伺ったインタビュー記事です。
2人目の採択起業家は、トゥエルブル 代表 大村 尚未 氏 です。
「カウンセリングで、本当に幸せな結婚を探す——大分発、アパレル出身カウンセラーの挑戦」

トゥエルブル 代表 大村 尚未 氏
(事業内容)
ひとりひとりに深く寄り添い、大分の婚姻数減少という課題に取り組む婚活・ブライダル事業
「子持ちは絶対に愛せない」と言いながら婚活していた50代の男性は、最終的にはバツイチで子持ちの女性と結ばれた。
大分市の結婚相談所「Twelblue(トゥエルブル)」を営む大村尚未さんは、顧客の本当の気持ちを引き出すためにカウンセリングを大切にしている。アパレル業界から転身し、全国展開する結婚相談所を運営する会社に入社。2年目で入会数・売上・成婚数で社内トップになった経歴を持つ。大分県のアクセラレーションプログラムへの参加を通じて、「カウンセリングで顧客の本当の幸せを見つける手助けをしたい」というビジョンが鮮明になった。
「結婚は人生に大きな影響を与えるもの」——
アパレルの現場で芽生えた確信
元々大村さんは大分市内の高級アパレルショップに勤めていた。高単価の商品を扱う中で、「お客さまが本当に求めているものは何か」を徹底的に突き詰めて接客していた。相手に寄り添うスタイルで、時には恋愛相談から縁結びに発展することもあった。
転機は、常連客の変化だった。毎月新作が出るたびに足を運んでいた顧客が、全く来店しなくなった。久々に再会すると「結婚しました」「子どもが生まれました」と笑顔で報告してくれた。以前は絶対に選ばなかったデニムを履くほど、価値観が一変している姿に驚いた。「結婚とは、人生にこれほど大きな影響を与えるものなのか」。
やがて「人の幸せに直結する結婚のサポートを通じて、大好きな地元で社会貢献できるのでは」と考えるようになり、転職を決意した。

未経験・20代・地方勤務で「全国トップ」になれた理由
転職先は横浜市に本社を置く結婚相談所の運営会社。本社勤務を経て、大分支店の運営を一任される。周囲のカウンセラーは40〜50代のベテランが多く、20代の大村さんは当初、自身の若さをネガティブ要素だと思い込んでいた。
だが、若いということは、婚活する会員と年齢が近いということでもある。会員には友人感覚で寄り添い、対面・電話・メールなどあらゆる手段で密に連絡を取った。結婚相談所での一般的なカウンセリングは「希望条件の整理」だが、大村さんは条件の奥にある価値観や過去の恋愛まで踏み込んで掘り下げることを意識した。婚活パーティーに欠員が出れば待機中の参加者に声を掛け距離を縮める徹底ぶりは「異端児」と呼ばれた。
2年目には入会数・売上・成婚数で全国トップに立った。「天職を見つけた」と確信した。
相談所の少なさと認知度の低さという課題に直面
カウンセリングを大切にした結婚相談所を作ろうと、2022年1月にトゥエルブルを立ち上げた。美容室や洋服購入への同行、プロフィール写真撮影への立会い、初回お見合いへの同席など、会社員時代以上に顧客のサポートに力を入れている。成婚後も結婚式場探しや転居先の職場紹介など、無償で相談に乗る。昨年は会員数が増えたことで半年以内の成婚退会も多く、11〜12月だけで6組の成婚が決まった。
成果を積み上げながらも、課題を感じていた。
現在は増えつつあるが、かつては県内の結婚相談所の数は少なかった。女性会員が大分に絞って相手を探そうとしても、候補がほぼいないという状況もあった。やむなく県外に活動範囲を広げ、結果として県外へ流出するケースも多かった。
結婚相談所に対する、一般の人の認知度の低さにも危機感を持っている。婚活アプリなどで手軽に取り組める一方、専門家に相談する機会がないため、上手くいかない時の理由が分からない。そうした状況で困っている人に頼ってほしいが、そもそも「結婚相談所に相談する」という考えが頭になければ選択肢にすら上がらない。もっと相談所を利用してもらえる仕組みが必要だと感じていた。

大分県のアクセラレーションプログラムへ——
自身の本当の気持ちと向き合う
民間だけでなく自治体との連携ができないかと模索していた。そんな中、大分県が主催する、起業家や経営者の成長を支援する事業「Oita GROWTH Ventures(おおいたグロースベンチャーズ、以下O-GROWTH)」の存在を知った。信頼する金融機関の担当者からの紹介もあり、応募。採択された。
半年間のメンタリングは、事業の方向性を整理する場である以上に、大村さん自身を深く掘り下げる時間になった。
メンターからこう言われた。「あなたにとって当たり前すぎて、大切にしていることが言語化できていない。『当たり前に大切にしていること』が、差別化ポイントになる」。
改めて自分自身を見つめ直そうと、幼いころの通知表や昔の日記を見返した。そして「ひとが好きだから寄り添いたい」という、仕事に対する根本的な動機が明確になった。
「ライフベースマリッジ」——顧客の本当の幸せを見つける
O-GROWTHを経て大村さんが掲げるのは「ライフベースマリッジ」という考え方だ。「どういう生活ができたら幸せなのか」をカウンセリングを通して顧客自身が発見し、幸せになる選択肢のひとつとして結婚を位置づける——そんな婚活のあり方を広めたいと考えている。
今後はSNSやブログなどで、ライフベースマリッジの考え方を広く発信していくつもりだ。組織化、法人化をして広めていくために、大村さんのカウンセリング手法をマニュアル化していく計画もある。
カウンセリングが人を変える——ある成婚の記録
冒頭の50代の男性は、結婚相談所の運営企業に転職して間もない頃に担当した。当初は「バツイチや子持ちは絶対に愛せない」と強く主張していた。一方、お見合いがなかなか成立しない苦しい日々が続き、婚活に疲れが見えてきた。
ある時、バツイチで幼い子どもがいる30代の女性からお見合いの申し込みがあった。大村さんは思い切って「会ってみませんか?」と男性に促した。結果、お見合いで二人は意気投合し、成婚へと至った。退会時、男性はこう話して涙したという。「この年でこんな素敵な女性と出会えただけでなく、同時に父親になれました。これ以上の幸せはないです」。
大村さんは結婚相談所の仕事を通して、顧客の変化をたくさん見てきた。だから、当初の要望がすべてではないと考えている。これからも、顧客が「本当に大事にしたいこと」を見つけるサポートを通して、地元・大分の人たちのウェルビーイングを高めていく構えだ。

■多様な事業成長を支援し、新しい経済と社会価値を創る「Oita GROWTH Ventures」
公式サイト:https://oita-growth-ventures.com/
主催:大分県
共同運営:公益財団法人 大分県産業創造機構 おおいたスタートアップセンター
運営:KIHARA Commons 株式会社