インタビュー

Oita GROWTH Ventures(おおいたグロースベンチャーズ)採択起業家インタビューvol.5  奈須 敬司氏(株式会社FUFU)

<令和6年度 Oita GROWTH Ventures 採択者>
株式会社FUFU CEO 奈須  敬司氏 

こちらは、⼤分県成⻑志向起業家育成⽀援事業「Oita GROWTH Ventures(おおいたグロースベンチャーズ)」の採択起業家5者の事業を始めたきっかけやお人柄、今後の展望をより多くの方に知っていただくことと、実際にアクセラレーションプログラムを開始しての現状や、今後目指していく事業成長についてお話を伺ったインタビュー記事です。

5人目の採択起業家は、株式会社FUFU CEO 奈須  敬司氏です。
「不動産業界のためのプロダクツ、10年以内に日本の隅々まで届けたい」

株式会社FUFU CEO 奈須  敬司氏

(事業内容)
不動産情報プラットフォーム『FUFU』で、不動産取引の透明性と公平性を向上させる事業を行なっている。

売主と買主をマッチングする
業界では画期的なアプリを開発

 ITを駆使することで、不動産業界の問題解決や技術支援が可能になるWebのシステム開発、アプリ開発を行う「株式会社FUFU」。フリーマーケット感覚で、不動産を売りたい人、買いたい人をマッチングする不動産全般の不動産情報プラットフォーム『FUFU』を開発した。

 この画期的な不動産情報プラットフォームを考案した代表の奈須さんは、不動産業界に携わり25年以上になる。長年働く中で、様々な課題や矛盾に接しジレンマを感じていた。「不動産業は仲介業とも言えます。高く売りたい売主と、安く買いたい買主の両方から依頼を受ける一連の流れは、よく考えると利益相反の関係性。売買情報の中に僕らが入ることによって、情報が曲げられることもあり、仲介する営業マンにもストレスがかかることが多いんです。本来、安心安全な取引を図るために宅建取引士や宅建業という専門家がいるのに、相場が絡んだり営業の部分がメインになっていくと、本来の理念と変わってしまうこともあり、このままではいけないと感じていました。それならば、売り手と買い手が直接情報交換をしてやりとりすれば、情報の透明性を図ることもでき、お互いに納得することで取引のスピード感もアップするのではと考えました。売買契約や取引価格に対しては、不動産エージェントがサポートに入るので安全性も確保されます。業界で働く人たちの負担軽減や、取引上の公平性向上のため、そして宅建業者が取引の安全担保業務に注力できるという一石二鳥のサービスを考え、この『FUFU』というプロダクトに辿り着きました」。

眠っていたアプリ事業を再構築したい

 実は、4年ほど前に外注でこのアプリを作成していたが、商品として売り出せるまでには至らなかった。ずっと保留状態だったが、『FUFU』をもう一度再構築したいと立ち上がり、再びギアを入れたタイミングで Oita GROWTH Ventures を知った。「この不動産情報プラットフォームを日本全国に広めたいという思いでした。まずは知ってもらう手段と、資金調達の問題が課題としてありました。それらをクリアにするには、いろんな力や支援が必要だと。自分だけの知識では、今後展開するにはもっと時間を有することになるだろうと思い、この事業に応募し、無事採択されました」。

大きく変わらないといけないと思わせてくれた
それが一番の収穫

 この半年間、メンタリングを受けてきた。グループ会社全体で50名以上の社員を抱える企業の代表を務める奈須さんにとって、初めての経験も。「社員の前で挨拶をしたり、実体験を大勢の前で話すことには慣れていましたが、ピッチという限られた時間の中で自分の想いや構想を話すのは未経験だったので、とても新鮮でした。メンターの方々から教わったことも多く、徹底して伴走してくれ、本当に感謝という言葉以外は見つかりません。机上の空想ではなく、失敗も成功も経験し、考え抜いて仕事を磨いてきた人たちのアドバイスは説得力がありました。もし、この支援事業に参加していなければ、自分の会社、自分の経験の中での判断に留まり、プロダクトも中途半端な状態で終わっていたと思うし、ここまで洗練されなかったと感じています」。

 支援を受け、自分の中で変化した部分はありますか? 「大きく変わったと思うところはないですが、逆に、大きく変わらないといけないということに気づかせてもらいました。何十年間も、自分だけを信じて突っ走ってきたおっさんが(笑)、ここまで〝変わらないといけないんだ〟という気持ちになるなんて、この歳でなかなかないと思います。それが一番の収穫かな。今まで出会ったことのない世界の人たちと関わり〝プロダクト? ん?なにそれ?〟と、言葉ひとつとっても解らないこともたくさんあったけど、刺激的な経験になりました。新しいものを作り、世の中の人たちに利用してもらうというアプローチも、目線や捉え方によって全然変わっていくんだということも知ることができました」。人の縁を大事にしてきた奈須さんだからこそ、今回の支援事業に参加し、本当に尊敬できる人に出会えたという喜びは大きいと話してくれた。

テストマーケティングを開始
課題に対しても真摯に取り組んでいきたい

 今年に入り、福岡でのアプリのテストマーケティングを開始した。利用状況はまだまだ想定には達していないが、じっくり腰を据えて判断していきたいと話す。「メンタリングの中で、UI(サービスを通じてユーザーが得る体験)/UX(サービスとユーザーの接点)の関係性が非常に弱いという指摘をもらいました。そのためにも、まずはこのアプリが、利用者にとっても、不動産業界にとっても有益なものだということを知ってもらわないといけない。資金があれば、お金を投資して一足飛びに周知を広められるかもしれないけど、そんな安易なことではないと感じています。テストマーケティングでいろんな課題が出てくると思いますが、真摯に取り組んでいきたいです」。

 10年以内に、日本全国の隅々にこの不動産情報プラットフォームを届けたいというビジョンがある。長い時間をかけ高齢者がスマホを使うようになったように、『FUFU』もじわじわと浸透し、みんなが当たり前に利用する時代が必ずくると、奈須さんは確信している。「田舎のおじいちゃんおばあちゃんの古民家を、田舎暮らしを夢見る若い人たちが不動産情報プラットフォームで気軽に購入できる…、そんな日が近い将来必ずくると思っています。ユーザーへの周知はもちろんですが、業界をいい方向へ変えるきっかけにもなるはず。不動産業界への啓蒙活動も含め、日本の不動産業界を変えたいという使命感も感じています」。

 長年にわたり企業のトップとして重圧と向き合ってきた奈須さん。新たな可能性に満ちたこの半年間は、次なる挑戦への後押しをしてくれる貴重な時間だったに違いない。

FUFU公式サイトはこちらから

■取材・文:安達博子

■多様な事業成長を支援し、新しい経済と社会価値を創る「Oita GROWTH Ventures」
公式サイト:https://oita-growth-ventures.com/

主催:大分県
運営:KIHARA Commons 株式会社

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